この下腹部のふくらみが、貴方を呑み込んでしまえばいいとすら思った。
冬の聖母
夕やけに照らされる、蝉の抜け殻は、つるりと油っぽい光を反射させている、
今は夏。
部屋の中はだいだい色に染まる。
彼の髪は、色彩を全て吸い込んでしまって、
くるくると色が変わっていた、あの透きとおるきれいな髪!
私はどこへもいけない、あの日のだいだいが、眼にやきついて消えないままで。
ふくらみをさする。やさしく、いたわるように。
いき場のない命は、いったいどうすればいいのだろうか、
4320時間を、259200分を、私とともにしたこの命。
冷えた砂が私を責める。
乳白色の涙。
彼のためではない、けれど、きっと彼によく似た、
この命、あわれな私と。
変わっていく私。
変わっていく私の身体、
変わらない私。
ひとつ、またたき、
そうして私は立つ。冷えた砂を踏みしめて、
今は夏。
それでも、頬を掠める夜風は涼しい。
うぶごえが聞こえるとき、この庭に、霜は降りているだろうか。
今は赤く染まるやわらかな銀は、
そのとき、どんな色をしているだろうか。
そのとき、貴方は私の傍にいるだろうか?
星がひとつ、濃紺の海に沈む。
いき場を見つけた命が、またひとつ去った、
それは誰だろうか。
貴方だろうか?
私は、祈る、彼に、
・・・いき場など見つからないように、
貴方が、見つからないように。
私に照射されただいだいが、貴方にも残っているように。
(070814)
散文な感じで書きたかったのです。
名づけて「坂田春夏秋冬シリーズ」(センスねえ)